日本3大天満宮のひとつに数えられる防府天満宮最後は茶室で締めくくりです。
「芳松庵」と名付けられた建築は現代和風の母屋と伝統的な茶室を流れとして
設けた池を渡る廊下で構成され、木造と思いきや実は木造とRC造のハイブリット(混構造)。
なぜ木造であるべき姿にRC造を取り入れたのか。
答えは1階の大広間(茶室)にありました。
30帖の広間の周りには広縁があり、それが廊下との緩衝スペースとしてデザインした意図と
らしく、このバッファースペースに間接照明を取り入れ柔らかな光が包み込む…といったものだが
これがどうも腑に落ちない。
大空間ではあるが素直に茶室を作るのであれば、このエレメントはむしろ邪魔なレイヤーでしかないと感じる。
変わって1階の茶室。
印傳のような紋様の竿縁吹き寄せ天井。
紋様は「梅鉢文」で一般には利休梅緞子(りきゅううめどんす)と言われている。
続いて2階茶室。
中央の杉浮かし彫板から広がる浦編み光天井。
風車のイメージを取り入れたデザインで、それぞれの隙間から垣間見る小屋組が実におもしろい。
天井と屋根(小屋裏空間)を閉塞し、それぞれ独立したものと考えるのではなく
閉じているようで繋がっている空間のシームレスが好きだ。
最後に離れにある躙り口をもつ伝統的な茶室。
茶の世界にはさまざまな流儀や作法があり、それぞれの茶室があるが
固有のヴァリエーションではなく、茶室のスケールと作法で構成した空間は伝統の追体験として
デザインしたという意図を認識できる。
ここは茅と網代天井。
全体のランドスケープもさることながら浮き、掘り込み、装飾などのディテールが随所に盛り込まれ
これが現代の和室建築であると感じさせられた時間であった。
障子に移る陰影。
訪れた客人に、もうひとつの風雅な楽しみを贈呈する。
そんな建築である。
設計:大江宏建築事務所
@imamura